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どうしようという訳もない
止める気も、背中を押す気もない
なにかをするわけでもなく、僕はまたこの世界に訪れた
ただじっと、君の行く末を傍観しに――
勇者と魔王との対峙
物語りのように綺麗に終わるわけもなく
彼らの戯曲は、終焉を迎えた
辺りは無残に壊れ…窓から風の抜ける音
そして―…
彼の頼りない呼吸音だけが残っていた
「ゼロ……か……」
「うん…」
「……また…泣いてる…?」
「うん…」
「はは……ごめん…」
「……うん」
悲しい 寂しい
「また、だめ……だったな」
「嗚呼…」
「早く…っ…終わりにしたい…っ」
誰に願うわけでもない
ニアは独り言のように空に呟いた
「――終わらせるよ」
「僕が終わらせる……約束する」
君との繋がりを求めて
なんの根拠も自信もない約束
君に聴こえてなくてもいい
僕は僕に誓いを立てる
最期の一息を終えて、彼は眠るように幕を下ろしてしまった
僕は彼を抱え、静かに歩き出す
この歩いた先に
君が待っていなくても
僕は――……
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