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「痛む?」

彼と落ち着いて話が出来たのは、件の井戸に着いてから

井戸の水を必要としてるのは、僕ではなくて彼になってしまったけれど

「あはは!大丈夫!こういうの慣れてるから!」

「慣れてるって…」


(それは大丈夫ではないと思うよ)


少し呆れるけれど、彼の屈託のない笑顔につられて微笑んでしまう

 

 

 

不思議な感覚

 

 

 

「また、会えるような気がしてたんだ」

「…?何が?」

「君に!前は会ってすぐにどこかに行っちゃったろ?」


そういえば…酷く滑稽な様を晒していたね…

忘れていて良かったのに、なんて



心にもない事を――…

「今日は、名前くらい聞かせてくれない?」

「ああ、そうだね。僕はゼロ。…君はニヴァルトだっけ?」

「そう!ニヴァルト・ムーア。皆からはニアって呼ばれてる!」

「ニア…僕も、そう呼んでいい?」

(……なんだか舌噛みそうだし)

「ああ、もちろん!よろしくな、ゼロ」

「ふふ、こちらこそ。ニア」

はい、と差し出された手


何も考えず、導かれるようにその手を取ってしまった

 

 

 

 

僕は光に群がる蛾のようだ

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